【事故防止の決定版】草刈機(刈払機)の刃交換を安全かつ確実に行う完全手順
草刈機の刃は、使用するうちに切れ味が落ちたり、チップが欠けたり、本体が変形したりします。そのまま使い続けると、作業効率が落ちるだけでなく、キックバックや刃の飛散による事故のリスクが高まります。
安全に作業を続けるためにも、正しい手順で定期的に交換しましょう。
ステップ1:作業前の「絶対安全」確認と準備
刃の交換作業に入る前に、人身事故や怪我を防ぐための最も重要な確認事項です。ここを怠ると命にかかわる事故につながる危険があります。
1-1. 機械の「完全停止」と「再始動防止」
これが最優先の安全対策です。
エンジン式の場合:必ずエンジンを停止し、スパークプラグのキャップを外してください。これは、誤ってエンジンが再始動してしまうことを防ぐための確実な措置です。
バッテリー式の場合:必ずバッテリーを本体から取り外してください。
燃料キャップの確認:交換時に本体を反転させるため、燃料キャップが確実に締まっていることを確認し、燃料漏れを防ぎましょう。
1-2. 保護具の着用と工具の準備
保護具:厚手の手袋(作業用手袋)は必須です。古い刃で手を切る事故を防ぎます。可能であれば長袖を着用しましょう。
工具:草刈機に付属のボックスレンチ(ソケットレンチ)と回り止め棒(ロックピン)を準備します。これらは刃を固定したり、ナットを回す際に使います。
ステップ2:古い刃を取り外す具体的な手順
刃の取り付け部は、特殊なネジ構造になっていることが多いため、注意が必要です。
2-1. 刃の回転を「回り止め棒」で固定する
ギアケース(刃を取り付ける駆動部)の側面に小さな穴を探します。
この穴に回り止め棒(またはロックピン)を差し込みます。
刃をゆっくり回し、回り止め棒がギアの穴にカチッと嵌まることで、刃が動かなくなります。
2-2. 刃を固定するナットを緩める
重要な注意点:草刈機の刃を固定するナットやボルトは、通常のネジと逆の**「左ネジ(逆ネジ)」になっていることがほとんど**です。
緩める時:時計回り(右回し)に回します。(普通のネジは反時計回り)
締める時:反時計回り(左回し)に回します。(普通のネジは時計回り)
付属のボックスレンチを使って、時計回りに回してナットを緩めてください。
2-3. 部品の掃除と点検
古い刃とナットを外したら、ギアヘッド内部や止め金具に絡みついた草や泥をきれいに掃除しましょう。汚れや異物が残っていると、新しい刃を正しく取り付けることができず、振動や事故の原因になります。
ステップ3:新しい刃の取り付けと「トルク管理」の徹底
新しい刃を取り付ける際、最も重要なのが締め付けの強さ(トルク)の管理です。
3-1. 正しい向きで刃をセットする
チップソーなどの金属刃には、表と裏があり、回転方向が指定されています。
新しい刃の裏表や回転方向を確認し、刃の向きを間違えないようにドライブディスク(台座)の上に乗せます。
3-2. ナットの締め付けと確認
止め金具とナットをセットし、反時計回り(左回し)に手で仮締めします。
回り止め棒を再び差し込み、ボックスレンチで増し締めします。
刃の「締め付けトルク」は命綱
締め付けが緩い場合:作業中に刃が緩んで外れ、飛散する重大な事故につながります。
締め付けが強すぎる場合:ナットやギアシャフトが破損し、機械の故障や思わぬ事故の原因となります。
メーカー推奨の締め付けトルクは18~25 N・m(ニュートンメートル)程度が目安ですが、必ずご使用の機種の取扱説明書で確認してください。ソケットレンチで成人男性が**「かなり強め」**に締める程度の感覚です。
最終確認:回り止め棒を抜き、刃を手で回してみて、ガタツキや大きなブレがないことを確認します。
3-3. 試運転と最終チェック
刃の交換後は、必ず安全な場所で低速から回転させ、異常な振動や異音がないかをチェックしてください。
刃の安全な選び方:作業場所に応じた適切な刃を選択
刃の交換時期だけでなく、作業に適した刃を選ぶことも事故防止につながります。
刃の種類 | 主な用途 | 安全上の特徴 |
チップソー(金属刃) | 硬い草、笹、細い木 | 切れ味が良いが、石に当たるとキックバックが起こりやすい。刃の欠けや飛散に注意が必要。 |
ナイロンコード | 柔らかい草、フェンス際、壁際 | 柔軟性が高く、石や障害物に当たっても衝撃が軽減され、事故リスクが低い。初心者や安全重視の方に最適。 |
樹脂刃(ナイフ型) | やや太い草、障害物が多い場所 | キックバックが起こりにくい構造。ナイロンコードより切断能力が高い。 |
硬いものや障害物が多い場所では、ナイロンコードや樹脂刃など、安全性を重視した刃の選択も検討しましょう。
刃の交換は、草刈機を長く、そして安全に使い続けるための必須の作業です。焦らず、一歩一歩、安全手順を確認しながら進めてくださいね。