作業中の「もしも」に備える!草刈機が突然故障した時のための安全対策
広大な敷地の草刈りや、長時間の作業中、「あれ?急に止まった」「回転がおかしい」といった草刈機(刈払機)の突然のトラブルに遭遇することは珍しくありません。
機械の故障は、単に作業が中断するだけでなく、思わぬ怪我や事故につながる危険性をはらんでいます。特に、回転刃に草が絡みついたり、エンジンが急停止したりした際の対処を誤ると、重大な事故を引き起こす可能性があるのです。
この記事では、草刈機が作業中に突然故障・不調に陥った場合でも、あなたが安全を確保し、冷静に対処できるようにするための具体的な備えと行動手順を詳しく解説します。
1. 「故障の前兆」を見逃さない!日頃の安全点検とメンテナンス
突然の故障を未然に防ぐため、そして万が一の際に安全な状態で機械を停止させるためにも、日々の点検は欠かせません。
1-1. 始動前の「五感」を使った点検
作業を始める前は、必ず以下の項目をチェックし、異常のサインを見逃さないようにしましょう。
点検項目 | 異常のサイン | 危険性 |
刈刃の状態 | 欠け、ひび割れ、異常な曲がり、取り付けネジの緩み | 刃の破片飛散、刃の脱落、異常振動 |
飛散防護カバー | 破損、ネジの緩み、規定位置からのズレ | 飛散物による怪我、巻き込み |
燃料・オイル | 燃料漏れ、指定外の混合油使用 | エンジン焼付き、火災、始動不良 |
異常な振動/異音 | 普段と違う大きな振動、金属が擦れるような音 | ギアケース破損、ベアリング焼付き、本体疲労による破損 |
緊急停止装置 | ストップスイッチが確実に作動するか | 故障時にエンジンを止められない危険性 |
1-2. 定期的な「予防メンテナンス」の徹底
故障は、消耗品の劣化や汚れの蓄積から発生することがほとんどです。
ギアケースのグリスアップ: 駆動部の摩耗・焼き付きを防ぐため、使用時間20〜50時間ごとを目安にグリスを注入しましょう。
エアフィルター清掃: フィルターが詰まるとエンジン性能が低下し、オーバーヒートの原因になります。汚れていたら洗浄または交換してください。
長期保管時の燃料抜き: 数週間以上使わない場合は、燃料タンクとキャブレター内の燃料を完全に抜くことが重要です。これを怠ると、燃料の劣化によりキャブレターが詰まり、翌シーズンにエンジンがかからなくなる主要な原因となります。
2. 突然のトラブル発生!作業中に「異変」を感じた時の行動手順
作業中に機械の様子がおかしくなったら、一連の安全停止手順を即座に実行することが、怪我を避けるための最重要行動です。
2-1. 【最優先】ストップスイッチによる「緊急停止」
作業の即時中断: 刈刃を地面から離し、すぐに**アクセルレバーを戻して低速(アイドリング)**にします。
ストップスイッチ操作: 手元の停止スイッチを「停止(OFF)」の位置に入れ、エンジンを止めます。
刃の完全停止確認: 刈刃の回転が完全に停止したことを目視で確認するまで、決して本体から目を離さないでください。
2-2. 「刈刃の巻き込み」に対する絶対厳守ルール
作業中、長いつる草などが刈刃に巻き付いて回転が止まったり、速度が落ちたりすることがあります。
鉄則: 巻き付いた草や異物を除去する際は、必ずエンジンを完全に停止してから行ってください。
危険な行為: エンジンをかけたまま、素手や棒で巻き込みを解こうとすることは厳禁です。エンジンがわずかな振動で再始動したり、絡みが急に解けて回転が始動したりする可能性があり、指や手を切断する重大な事故につながります。
2-3. エンジン再始動しない時の「オーバーヒート」対策
休憩や燃料補給のためにエンジンを停止した後、再始動しようとしてもなかなかかからないことがあります。特に暑い時期に起こる、**オーバーヒート(ベーパーロック現象)**の可能性があります。
冷却待ち: 無理にスターターを何度も引かず、30分程度を目安に日陰で機械を冷やしましょう。
冷却運転: 停止する前に、約1〜2分間アイドリングで運転し、冷却運転を行ってから停止することで、再始動時のトラブルを防ぎやすくなります。
3. 故障に備えて「携行すべき工具とアイテム」
現場で応急処置や簡単な修理、再調整ができるように、作業現場には以下のアイテムを携行しましょう。
プラグレンチと予備の点火プラグ: エンジンがかからない時、点火プラグが原因のことが多いため、清掃や交換用として必須です。
ドライバーとボックスレンチ: 刈刃の交換や、緩んだ飛散防止カバーやハンドルのネジを締めるのに使います。
予備の刈刃: 刃が欠けたり曲がったりした場合に、すぐに安全な刃に交換できるように準備しておきましょう。
グリスガン(少量): ギアケースのグリスが不足しているサイン(異音、熱など)を感じた時に、応急的にグリスアップできるようにしておくと安心です。
乾いた布(ウエス)とブラシ: 刈刃や冷却フィンに付いた汚れや草を取り除くために使用します。特に冷却空気吸入口の詰まりはオーバーヒートに直結するため、こまめに掃除しましょう。
草刈機は、高速回転する刃を持つ危険な道具です。「機械はいつか壊れるもの」という前提に立ち、日頃から徹底的な点検と整備を心がけ、万が一の故障・不調時には**「エンジン停止」を最優先**する安全意識を持ち続けてください。